筋肉痛とは
ハードに運動したら筋肉痛になってしまった・・・」という経験、誰もがありますよね。
誰もが悩まされたことがある筋肉痛のお話です。あなたはなぜ筋肉痛が起こるのかを知っていますか?
「乳酸っていう疲労物質が筋肉に溜まるんじゃなかったかな・・・」なんて思った方が多いと思います。しかし、実は乳酸が筋肉痛の原因という説は誤りだといわれているんです・・・!
なぜ、この説が誤りかというと、「乳酸」は運動中に作られる物質なので、運動後しばらくしてから筋肉痛の症状が出ることとつじつまが合わないからなんです。
もし、筋肉痛の原因が乳酸だとすると、筋肉痛は運動しているときに始まって、運動後はだんだんと回復していくはずです。
しかし、実際に筋肉痛が始まるのは、運動をした翌日以降であることが多いですよね。
そんな経緯があり、最近では新たな説が有力になっています!
それは、”筋肉がダメージを受けることで、炎症が起き、痛みが出る”という説です。
また、筋肉痛はしばらく痛みが続くので、数日間は「イテテテ・・・!」と苦しむことが多いです。
ちなみに、筋肉痛は予防することもできるんですよ!というわけで、今回は、筋肉痛を治す方法や筋肉痛のメカニズム、予防法について紹介していきます。
筋肉痛の痛みが遅れてやってくるのは、筋肉の構造が関係
冒頭でいろいろと説明しましたが、結局筋肉痛の本当の原因は何なのでしょうか?
筋肉痛のメカニズムを知っておくと、筋肉痛の治し方や予防法を理解しやすいので、まずは筋肉痛が発生するメカニズムを説明していきますね。
あなたが筋肉痛になるとき、運動した翌日などに症状が出ることが多くないでしょうか?
運動後の筋肉痛は、このように痛みが遅れてやってくるのが特徴で、「遅発性筋肉痛(ちはつせいきんにくつう)」と呼ばれます。
余談ですが、遅発性のように遅れて症状が出る遅発性筋肉痛以外に、インフルエンザなどの発熱が原因の筋肉痛や、こむら返りなども筋肉痛の一種です。
今回は、運動後の筋肉痛である遅発性筋肉痛のことを筋肉痛と呼んでいきますね。
さて、そんな筋肉痛の痛みが始まるのは、運動してから数時間~2日ほど経ってからです。
痛みのピークは2~3日後で、1週間以内で治るのが一般的です。
それにしても、筋肉痛の症状が出るのに少し時間がかかるのはなぜでしょうか。
それには筋肉の構造が関係していたんです。筋肉痛のメカニズムを知る上で、筋肉の構造について説明していきましょう。
筋肉は、”そうめん”のように細い「筋線維(きんせんい)」の集合体です。
筋線維がたくさん集まって束になり、その束が集まったものが筋肉なんです。
そして、筋線維は「筋膜(きんまく)」と呼ばれる膜に包まれています。
筋肉痛はこの筋線維がダメージを受け、痛みを引き起こす物質が放出されることで発生します。
筋肉痛が発生するメカニズムは、以下の通りです。
筋肉痛が発生する流れ
- 激しい運動で筋線維がダメージを受ける
- 激しい運動で筋肉に大きな負荷がかかると、筋線維がダメージを受けて損傷します。
しかし、筋線維には痛みを感じる「痛覚」がありません。
筋膜には痛覚がありますが、この時点では筋膜には何の変化も起きていません。
そのため、筋線維がダメージを受けただけでは、私たちは痛みを感じません。
- 白血球が集まって炎症が起きる
- 激しい運動で筋肉に大きな負荷がかかると、筋線維がダメージを受けて損傷します。
しかし、筋線維には痛みを感じる「痛覚」がありません。
筋膜には痛覚がありますが、この時点では筋膜には何の変化も起きていません。
そのため、筋線維がダメージを受けただけでは、私たちは痛みを感じません。
- 発痛物質が発生して痛みを感じる
- ただ、白血球は掃除をすると同時に、腫れや痛みを引き起こす「発痛物質」である「ブラジキニン」や「プロスタグランジン」などを放出します。
これらの発痛物質は、筋膜にある痛覚を刺激します。また、発痛物質は筋線維の腫れも引き起こします。以上が、筋肉痛がおきるメカニズムです。
つまり、筋肉痛とは、白血球が放出する発痛物質によって引き起こされる痛みなんですね・・・!
私たちが筋肉痛になるまでにタイムラグがあるのは、発痛物質が発生するまでは痛みを感じないからだったんです!
続いては、お待ちかねの筋肉痛を早く治す方法を紹介していきます!
筋肉痛のメカニズムがわかれば、筋肉痛を治す方法は理解しやすいです。
筋肉痛を治す方法は、血行促進や栄養補給、睡眠
筋肉痛の痛みを和らげるためには、筋線維のダメージを回復したり、痛みの原因である発痛物質を散らしたりするのが効果的です
筋肉痛を治す方法は、以下の3つです。
- 筋肉の血行を促進させる
- それを手助けするのが、”栄養分”と”酸素”です。
そして、栄養分や酸素を筋線維へと運搬してくれるのは血液です。
ですから、筋線維のダメージを回復するには血行をよくすることが重要です!また、血行が促進されると、発痛物質を患部から散らすことができるので、痛みも軽減することができます。
血行を促進するには、以下が効果的です!
- ぬるま湯にゆっくりと浸かる
- サイクリングなどの有酸素運動やストレッチをする
有酸素運動は筋線維のダメージ回復を早めますし、筋肉痛のときでも身体に負担をかけずにできる運動としてもオススメです!
こうした血行をよくする行動を取りつつ、しっかりと睡眠をとることも忘れないでください。筋線維のダメージを回復するには、筋線維を新しく作っていく必要があります。
タンパク質やビタミン類を意識的に摂る
ダメージを受けた筋線維を早く回復させるためには、栄養補給が欠かせません。
筋肉痛になったら、以下の栄養素をとくに意識して摂ってみてくださいね。
- タンパク質は筋肉の素となる栄養素で、ダメージ回復に効果的
- 魚や肉、大豆や卵、乳製品などにたくさん含まれています。
- ビタミンCとビタミンE
ビタミンCとビタミンEは血行促進効果があるので、ダメージ修復を早めてくれます。
フルーツや生野菜、ナッツ類や植物オイルなどにたくさん含まれています。
また、ダイエットを目的に運動している場合、摂取カロリーを抑えてしまいがちですが、筋肉の修復にはエネルギーを消費します。
ですから、しっかりとカロリーを摂っておくことも大事なんです。
1日に必要なカロリーは、身長や体重、生活環境などによって違います。
もし医薬品を使用する場合は冷却シップやモーラスなどの貼付薬、ロキソニンやバファリンなどの経口薬に代表される「非ステロイド系消炎鎮痛剤」です。
ロキソニンやバファリンなどの経口薬は、痛覚に痛みを知らせる発痛物質の生成を抑えます。
3睡眠しっかりとる
疲労回復筋肉の回復には成長ホルモンが大切です。
成長ホルモンを増やす方法
成長ホルモンを増やす方法は、自然に増やす方法と人工的に増やす方法があります。
睡眠
成長ホルモンが分泌されるのは睡眠中です。
また、成長ホルモンは寝る時間や概日リズムに影響を受けることはなく、睡眠時には必ず分泌されます。
ただし、睡眠の質が悪い場合や睡眠時間が短い場合、十分な成長ホルモンが分泌されなくなります。
また、睡眠時間の変化は疲労そのものの原因となるため、なるべく規則正しい時間に寝るほうが良いとされています。
睡眠不足や睡眠の質の悪化による疲労については、不眠症解消方法一覧をご参照下さい。
低血糖・空腹
空腹によって若返る本が売れています。
理由は空腹による低血糖によって成長ホルモンが分泌され、 成長ホルモンによるアンチエイジング効果が注目されているからです。
空腹になると脳が低血糖を解消しようと、 肝臓でのグルコース生産を開始するため、 成長ホルモンを大量に分泌します。
そのため、空腹時には成長ホルモンが通常時よりも多く分泌されるようになります。
無酸素運動・加圧トレーニング
成長ホルモンの分泌のトリガーとなる一つの物質は乳酸です。
有酸素運動は乳酸をあまり発生させないのですが、 筋力トレーニングや加圧トレーニングなど、いわゆる無酸素運動と呼ばれる運動は、成長ホルモンの分泌に必要な乳酸を多く発生させます。
無酸素運動で乳酸が多く発生するのは、体内のグリコーゲンを乳酸に分解することによって、一時エネルギーを作り出すためです。
(乳酸が疲労物質ではなく、一時エネルギーであることは、乳酸は疲労物質?をご参照下さい。)
そして、同じ無酸素運動でもより多くの乳酸を発生させるのは筋肉によって血管を押しつぶす高負荷のトレーニングなのですが、女性には負荷が高く実現が難しくなっています。
加圧トレーニングやスロートレーニングは 少ない負荷でも簡単に血流を阻害する効果があり、 低い負荷でも高負荷のトレーニング以上に乳酸を発生させ、 その結果、成長ホルモンが多く分泌されます。
有酸素運動
有酸素運動もまた、成長ホルモンを増加させます。
筑波大学 生命領域学際研究センターの発表によると、高齢者の座りがちな女性は、体内で一酸化窒素を十分に産出できない、という仮説を元に、 週5日、1回30分、比較的穏やかなエアロバイクの運動を3ヶ月行ったところ、 一酸化窒素の量が大幅に増加した、と発表しています。
一酸化窒素には、 「血管を拡張させ血流を良くする働き」、「成長ホルモンの分泌を促進する働き」があるため、定期的な軽い負荷の運動により、成長ホルモンを増加させる効果があります。
食事
成長ホルモンはタンパク質から生産されます。
タンパク質を多く摂ることで、成長ホルモンの分泌が促進されることはないものの、成長ホルモンの生成には、タンパク質は必須となります。
菜食主義や偏食による栄養の偏りは、成長ホルモンの生成に必要なタンパク質が不足する場合があります。
また、チョコレートやココアに含まれるカカオには、一酸化窒素の産出を増加させ、成長ホルモンの分泌を促進するフラバノールが含まれます。
ここまで筋肉痛の治し方について説明してきました。
筋肉痛に悩んでいる方はぜひ取り入れてみてくださいね。
でも、そもそも筋肉痛になりたくないですよね?
筋肉痛を予防するには、筋肉に負荷をかけないように気をつけることが大切です。
というわけで、次は筋肉への負荷が大きい動きについて、説明していきます。
筋肉が伸びた状態で運動すると、筋肉へのダメージが大きい
筋線維がダメージを受けるのは、筋肉が引き伸ばされた状態で負荷がかかっている時です。
この状態での運動を「伸張性収縮運動」と呼びます。
日常の動作でいえば、下り坂を下ったり、階段を降りたりする動きが伸張性収縮運動にあたります。
また、山登りをして急な下り坂を長時間歩いた時は、筋肉痛になる可能性が非常に高いです。
そのほか、重い荷物を降ろしたりするときに、腕が伸長性収縮運動をしています。
この運動をしている際の動作を見ると、下半身を使う動きが多いことがわかると思います。
つまり、日常生活で起こる筋肉痛は下半身に症状が出ることが多いんです。
ちなみに、伸長性収縮運動以外の筋肉の動きには、以下のようなものがあります。
こうした動きは筋肉への負荷が少ないので、筋肉痛を引き起こしにくいです。
1.短縮性収縮運動
筋肉が縮んだ状態で、筋肉に負荷がかかる動きです。
たとえば、階段を上ったり、荷物を持ち上げたり、自転車のペダルを踏み込む時などの動きです。
2.等尺性収縮運動
筋肉が伸び縮みしていない状態で、筋肉に負荷がかかる動きです。
たとえば、腕相撲や空気椅子のように、動きがなく静止しているような状態です。
あなたがなにか運動をする時には、筋肉がどんな動きをするかを考えてみましょう。
もし、それが伸張性収縮運動だった場合は、筋肉が完全に伸びきらないように、ゆっくりと動作することを心がけてください。
下り坂はゆっくり降りたり、重い荷物は時間をかけて降ろしたりするなど、丁寧な動作を心がけると筋肉痛の症状が軽くなります。
また、筋肉痛が残っている状態で運動する場合は、短縮性収縮運動や当尺性収縮運動がメインとなるような運動に切り替えるのがオススメです。
たとえば、ランニングによって足が筋肉痛になってしまったら、短縮性収縮運動であるサイクリングに切り替えるといいでしょう。このように筋肉痛になりやすい動きには特徴があるので、その動きを回避すればある程度回避できます。
しかし、伸長性の動きや運動を一切しないわけにもいかないですよね。
ですから、伸張性収縮運動をするときは、運動前にこれから紹介する筋肉痛の予防法を試してみましょう。
というわけで、最後に、筋肉痛を予防する方法を紹介します!
筋肉痛の予防方法は、アイシング
筋肉痛を予防するには、筋肉への負担をなるべく減らしておくことが重要です!
たとえば、以下の2つの方法を運動に取り入れるとよいでしょう。
- ストレッチで筋肉を伸ばしておく
- 運動直後にアイシングをして炎症を鎮める
ケガを防止するには、運動前はストレッチをした方がいい、ということはよく知られていますよね。
実は、ストレッチはケガの防止だけでなく、筋肉痛の予防にも効果的なんです!
なぜかというと、ストレッチであらかじめ筋肉を伸ばしておくと、運動時の筋線維へのダメージを減らせるからなんです。
筋肉痛の予防には、筋肉を伸ばしながらじっくりと体重をかけることができる”反動をつけないストレッチ”がとくに効果的です!少し意外な気がしますが、運動直後にアイシングをするのも筋肉痛の予防になります。
まだ筋肉痛の痛みが出ていないときに、しっかりと冷やすのがポイントです。
アイシングをする時は、氷水が入った”氷のう”を筋肉にあてましょう。
もし、アイスパックなどを使う場合は、タオルなどに包んでくださいね。
アイスパックを直接皮膚にあててしまうと、凍傷になる恐れがあるのでくれぐれもご注意を。なぜアイシングが筋肉痛の予防に効果的かというと、運動によってダメージを受けた筋線維の炎症を鎮めることができるからなんです。
ただ、アイシングをしすぎると凍傷や回復の遅れにつながることもありますので、長くても20分程度にとどめましょう。これらの3つの予防法は、どれも手軽にできますので、今度運動をする前にぜひ試してみてくださいね。また、筋肉痛になってしまったとしても、基本的には1週間以内には回復しますので安心してください。
ただ、下記のような症状が出ているときは、筋肉痛以外の原因が考えられますので、すぐに病院を受診してください。
筋肉痛が1週間以上続いている
骨折や肉離れなどの重大なケガをおこしている可能性があります。
運動していないのに筋肉痛のような痛みを感じる
内科系の病気の疑いがあります。